トラックドライバーの働き方改革とは?きついイメージを払拭するための施策も紹介!

    トラックドライバーの仕事について、きついというイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、運輸業界を含めさまざまな業種で働き方改革が進んでおり、トラックドライバーの労働環境も変わってきています。

    この記事では、まず運輸業界で懸念されている働き方改革における2024年問題について運送会社側とトラックドライバー側、荷主企業側それぞれの角度から解説します。そのうえで働き方改革を推進するための施策も紹介しますので、参考にしてください。

    そもそも働き方改革とは?

    日本では近い将来少子高齢化にともない生産年齢人口が減少することが予想され、問題視されています。また、育児や介護との両立など、働く人のニーズが多様化していることを受けた職場の環境づくりも課題です。

    政府が推進する働き方改革では、働く人が自分の事情に応じて、柔軟な働き方を選択できるようにすることが求められています。特に雇用の7割を締める中小企業で、着実に働き方改革を進める必要性が強調されています。

    具体的に法改正も進み、2019年4月1日には働き方改革関連法が施行され、事業者は年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対して、毎年確実に最低5日は有給休暇を取らせなければならなくなりました。そのうえ、残業時間は原則月45時間・年間360時間以内に上限が定められています。

    たとえ特別な事情があって労働者が同意しても、年間720時間以内・複数月平均80時間以内・月100時間未満の制限を超えて残業させてはなりません。さらに、正社員と非正規社員との不合理な待遇差を禁止し、同一労働同一賃金にすることも求められています。*1

    トラックドライバーはほかの業種より長く働ける

    先述したように、時間外労働の上限規制は原則が月45時間・年間360時間以内と定められています。しかし、運輸業界の実情を考えると、いきなりこの基準をクリアするのは不可能です。そこで、働き方改革関連法ではすべての業種に対して一律に施行するのではなく、一部の職業に対して猶予期間が設けられています。トラックドライバーの「自動車運転の業務」に対しても、2024年3月31日まで適用が猶予されています。

    猶予が終了する2024年4月1日以降も、36協定の特別条項を締結することで、トラックドライバーの年間時間外労働の上限を960時間にすることが可能です。ほかの業種では原則として年間360時間、臨時的な特別の事情があっても年間720時間以内と定められているのに比べると、かなり長く働けます。*2

    運輸業界の「2024年問題」とは?

    これまでも政府は順次働き方改革を進めています。中小企業でもすでに2020年4月から時間外労働の上限規制などが適用されていますが、先述した通りこれまでトラックドライバーなどの自動車運転業務に関しては猶予されてきました。

    しかし、いよいよ2024年4月1日からはトラックドライバーにも適用が始まる予定です。これに伴いさまざまな問題が発生すると考えられ、こうした一連の問題は2024年問題とよばれています。

    ここからは運送業界における2024年問題について、その問題点を運送会社側とトラックドライバー側、荷主企業側それぞれの角度から解説します。

    運送会社側の問題

    運送会社側が最も懸念しているのは、売上や利益の減少です。2024年4月以降に時間外労働の上限規制が適用されれば、原則は月45時間、年間360時間以内です。特別条項付き36協定を締結した場合は、年間960時間の条件規制が認められるものの、これまでに比べてトラックドライバーの労働時間が少なくなることは目に見えています。

    運輸業界は労働時間が売上に直結する業種であるため、時間外労働の減少に比例してトラックの走行距離も少なくなくなり、売上も減少することになるでしょう。

    一方で、売上に関係なく必要な経費、例えば減価償却費やオフィスの賃料などは発生するため、利益も減少することが予想されています。

    トラックドライバー側の問題

    トラックドライバー側の懸念は、収入が減少することです。会社にもよりますが、トラックドライバーの多くは固定給にプラスして、売り上げに応じた歩合給や走行距離に応じた運行手当をもらっています。

    しかし、働き方改革の推進によって事業者は時間外労働を削減する動きを進めるかもしれません。走行距離に応じて運行手当を受け取っていたドライバーや、長時間働いて売り上げが伸びるほど歩合給が増えていたドライバーは、当然影響を受けることが想定できるでしょう。さらに、収入が減れば離職を検討する人が増えることも考えられます。

    荷主企業側の問題

    荷主企業側には、輸送運賃が上がるなど物流コストの上昇が懸念材料の一つです。2024年問題によって運送会社側の売上や収益が減少することで、減収分を運賃の値上げでカバーしようとするケースが出てくることもあるでしょう。

    会社やトラックドライバーにとって、売上や収入を確保するために運賃値上げは仕方ない方策かもしれません。ただ、輸送を依頼する荷主にとっては輸送コストの増加は頭の痛い問題です。

    また、トラックドライバーの実働時間が減れば従来通りの時間に配送するのが難しくなり、配送スケジュールの見直しを迫られることもあるでしょう。さらに、実働時間が短くなった分、輸送距離に影響が及ぶことも考えられます。

    働き方改革を確実に推進するために

    運輸業界の労働時間や時間外労働は全職業の平均に比べると長い傾向があり、国土交通省や厚生労働省はもちろん、警察庁や環境省、経済産業省などが協力して対策を講じています。

    トラックドライバーの拘束時間は、運転しているときだけではありません。実際には荷待ち時間や荷役時間が、拘束時間の何割かを占めています。トラックドライバーの長時間労働を是正するための環境整備として、荷待ち時間や荷役時間などをできるだけ短時間で済むようにすることがポイントの一つです。

    具体的にはICTの活用やトラック予約調整システムの導入、パレット化による荷役の機械化によって、運行管理の効率化や待ち時間の削減など、無駄を解消する方法があります。

    行政処分の強化

    トラックやバス、タクシーなどのドライバーが長時間労働になりがちな状況を受け、2018年7月1日からは自動車運送事業者に対する行政処分が強化されています。過労防止関連の違反に対しては処分量定が2〜4倍も引き上げられました。

    例えば、乗務時間等告示遵守違反に関しては、従来未遵守5件で警告のみでしたが、改正後は未遵守1件で10日車、2件以上で20日車の処分日車数が加算されます。トラックに関しては行政処分を受けると、使用を停止させる車両数の割合が最大5割にも引き上げられました。*3

    ホワイト経営の「見える化」

    トラックやバス、タクシーの事業者では、働き方改革を進めなければならないと同時に、運転者不足に対応する取り組みも課題となっています。2020年には国土交通省が運送事業許可取得後3年を経過している自動車運送事業者を対象とした「運転者職場環境良好度認証制度」、通称「働きやすい職場認証制度」を創設しました。

    2022年からは、より水準の高い「二つ星」の認証も始まっています。取得すれば認証マークの車両表示ができるとともに、制度を実施している日本海事協会のホームページでも公表されるなど、労働条件や働く環境の「見える化」が可能になります。

    会社にとってはホワイト経営に取り組んでいることを取引先や求職者にアピールできるメリットがあり、トラックドライバーにとっては就職先選定の際に目安になるでしょう。

    トラックドライバーも働き方改革を

    トラックドライバーは輸送インフラを支える重要な仕事でありながら、これまでずっと人材不足が叫ばれてきました。政府が働き方改革を進めるにあたり、運輸業界に対してもさまざまな省庁が後押しをしています。

    「働きやすい職場認証制度」もその一つです。長時間労働を是正するための取り組みを行い、労働条件や労働環境の見える化を実現することで、得られるメリットは少なくありません。「働きやすい職場認証制度」の活用も含め、トラックドライバーの仕事も働き方改革が進められています。

    文責 働きやすい職場のミカタ編集部

    *1出所)厚生労働省「働き方改革とは?」

    *2出所)厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」

    https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

    *3出所)国土交通省 北陸信越運輸局「自動車運送事業者に対する行政処分等の基準を改正しました」

    https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/content/000110760.pdf